にんにく卵黄を食べる理由の大半は滋養強壮や疲労回復などの健康増進を目的としたものではないでしょうか?
その背景には「にんにく」と「卵黄」という栄養価の高い食材による相乗効果が期待できることにあると思います。
しかし、そこには一つの疑問が浮かびます。
単に栄養や相乗効果を期待するだけならばにんにくと卵黄をそのまま食べれば良いのではないでしょうか?
敢えて「にんにく卵黄」を食べる意味はどこにあるのでしょう?
なぜ、わざわざ「にんにく卵黄」という食品にする必要があるのでしょうか?
意外とこの質問を多くされるので、検証して考えを纏めてみました。
にんにく卵黄であることの理由
「にんにく卵黄」という伝統食品が作られた経緯は明らかになっていませんが、にんにく卵黄というのは本来、にんにくと卵黄の栄養的な相乗効果を狙ったものではなく、「にんにくを食べやすくする」ことを目的に考えられた食品なのではないかと考えられます。
もし、栄養素や栄養の相乗効果を一番に狙うのであれば「卵黄」ではなく、「全卵」を使うはずです。
なぜなら卵白には非常に高品質のたんぱく質が含まれているからです。わざわざこの卵白を除いて卵黄だけ使うということは、栄養以外の目的があるとしか思えません。
にんにくは食べにくい
にんにくの効能や効果は古くから知られており、にんにく卵黄の発祥地とされる南九州・薩摩地方でも昔からにんにくを盛んに食べていたと言われます。
もちろん昔はにんにくの効能や効果の科学的な分析などはされていなかったと思いますが、体感的ににんにくを食べると元気になるということが分かっていたのだと思われます。
しかし、今も昔も同じようににんにくの臭さや辛さ、胃腸への負担などがあり、にんにくは決して食べやすい食材ではありません。
まして現在のように多様な料理方法があるわけでは無かったため、料理で工夫して食べるということは考えにくかったでしょう。
にんにくは体に良いことは分かっているものの食べにくい食材である。
では、どうすれば良いか?
というところから考えられたのが「にんにく卵黄」ではないでしょうか?
にんにく卵黄の食べやすさ
にんにく卵黄にはニンニクが食べやすくなっているポイントがいくつかあります。
それは次のようなものです。
臭いがしない
にんにく卵黄は作る過程でにんにくをまるごと加熱しており、それがにんにくの臭いを軽減しています。
更に、卵黄と混ぜることによりアリシンとたんぱく質が結合することも臭いを軽減する要因となっています。
臭いはいつの時代も嫌がられるものですが、昔はにんにくの臭いは差別の一因になったとも言われますので、臭いを軽減させることは単に嗜好以上の必要性があったと思われます。
胃腸に優しい
にんにくを食べすぎるとアリシンの殺菌作用により胃腸障害が起きることがあります。
しかし、にんにく卵黄はアリシンがたんぱく質と結合しているためその作用が穏やかになっています。
手軽さ
伝統食としてのにんにく卵黄は粉末か小さい団子状に固めたものでした。これは卵黄を使うことで可能になる形状です。
練れば団子状になり、そのまま乾かせば粉末になります。
そのため団子状のものは、そのまま食べることができますし、粉末のものは”ふりかけ”にしたり、味噌汁など他の食材に入れて簡単に食べることができるようになります。
このようににんにく卵黄にすることで手軽ににんにくを食べることができるようになるのです。
携帯しやすさ
にんにく卵黄は江戸時代の参勤交代の携帯食として用いられたという話しもあります。
前述のように小さな団子状にすることで、持ち運びが楽になり、それでいて栄養価が高いという、今で言うビタミンサプリや栄養ドリンクのような用法で使われていたと思われます。
これはにんにく単体では不可能なことで、にんにく卵黄だから可能なことなのです。
にんにくと卵黄を一緒に食べれば同じではないのか?
冒頭に記したように効能や効果の面から考えれば、にんにく卵黄という食品ではなくてもニンニクと卵黄を一緒に食べれば良いことになります。
しかし、実際ににんにくと卵黄を食事として一緒に食べるのは結構難しいものがあります。
ハッキリ言ってあまり美味しくありませんし、美味しくするための料理を考えるのも面倒です。
食べやすくもないので、量も食べられませんし継続性もありません。
そう言った意味で「にんにく卵黄」という食品は気軽・手軽に食べられるので適量を継続的に食べることができます。
これがにんにく卵黄の大きなメリットなのです。
なぜ、全卵を使わないのか?
にんにく卵黄の本来の目的が「にんにくを食べやすくする」ということがお分かりになって頂けたと思います。
しかし、これは卵黄でなく全卵でも可能です。
記述したように卵白には高品質のたんぱく質が含まれています。それを取り除く必要性は何だったのでしょうか?
なぜ、「にんにく卵」ではいけなかったのでしょうか?
これは実際に「にんにく卵」を作ってみると分かるかと思います。
卵黄だけでなく全卵を使うと全体的に固くなって、団子状にも粉末状にもしにくくなります。味も若干大味になります。
つまり、食べにくく、そして不味くなります。
恐らく、昔の人も色々作り方を試してみて、にんにくと卵黄の組み合わせが一番にんにくを食べやすくすることを発見したのでしょう。
このように、にんにく卵黄は正に先人達の食の知恵によって生まれた健康食品なのです。